遺産分割協議は、相続人全員が参加して行わなければなりません。したがって、一部の相続人を除いて行われた遺産分割協議は無効となります。
では、相続人の中に疎遠にしている相続人がいる場合や不在者(行方不明、音信不通で生死不明の者)がいる場合、遺産分割協議はどのように進めるべきなのでしょうか。
このようなケースでも、行方不明者である相続人を除いて遺産分割協議を行うことはできません。
様々な手段を使っても連絡が取れない相続人がいる場合は、最終的に「不在者財産管理人」という制度を利用し、遺産分割協議を進めることになります。
このページでは、不在者財産管理人とはどのような制度なのか、選任方法や注意点について説明していきます。
このページの目次
疎遠にしている相続人や不在者がいる場合の遺産分割協議の流れ
下記の手順で連絡が取れないか試してみます。
不在者財産管理人とは
不在者財産管理人の職務
行方不明の不在者のために、財産を管理し、財産目録を作り、定期的に家庭裁判所に報告すること。
不在者財産管理人の選任について
選任方法
不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所に申立てをして選任してもらいます。
申立ての費用
- 収入印紙800円
- 連絡用の郵便切手
財産管理に必要な費用の予納が必要な場合もあります。
申立てにあたり主な必要書類
- 申立書
- 不在者の戸籍謄本
- 不在者の戸籍附票
- 財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票
- 不在の事実を証する資料
- 不在者の財産に関する資料(不動産の登記事項証明書、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類等)
- 相続人からの申立ての場合は相続関係を証する資料(戸籍謄本等)
不在者財産管理人を選任するときの注意点
不在者財産管理人を交えての遺産分割
不在者財産管理人が選任され、不在者財産管理人を交えて遺産分割協議を行う際は、家庭裁判所の許可が必要となります。そのため、不在者に不利な内容の遺産分割はできません。基本的に法定相続分以上の財産を不在者に与えないと家庭裁判所の許可はもらえません。
不在者財産管理人を自分たちで選べない
家庭裁判所が不在者財産管理人を選任するので、相続人が自由に選任することはできません。
報酬が発生する場合がある
弁護士や司法書士等の専門職が不在者財産管理人に選任された場合、報酬が発生します。
不在者が現れるまで職務は続く
不在者財産管理人は不在者が現れるまで財産を管理します。したがって、遺産分割協議が終わったからといって、職務が終わるわけではありません。
尚、他に不在者財産管理人の職務が終了するケースは、
- 不在者の失踪宣告が行われた場合
- 不在者の死亡が確認された場合
となります。
失踪宣告との違い
これまで説明してきた不在者財産管理人の選任と関連して、失踪宣告の申立てという制度があります。
失踪宣告を申し立てるには、一般的に不在者の生死が7年以上不明という要件があります。一方、不在者財産管理人の場合にはこのような期間の要件はありません。
家庭裁判所に失踪宣告が認められると、失踪者は死亡したものとみなされます。
連絡がつかない相続人が行方不明になって7年以上が経過している場合、失踪宣告を申し立てることによって相続手続きを進められる可能性もあります。
失踪宣告が認められた場合は、失踪者は死亡とみなされるため、行方不明者の相続人を交えて遺産分割協議をすることになります。